蓮香
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)桑生《そうせい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)帰る時|繍《ぬい》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]《にわとり》
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桑生《そうせい》は泝州《そしゅう》の生れであって、名は暁《ぎょう》、字《あざな》は子明《しめい》、少《おさな》い時に両親に死別れて紅花埠《こうかほ》という所に下宿していた。この桑は生れつき静かなやわらぎのある生活を喜ぶ男で、東隣の家へ往って食事をする他は、自分の座にきちんと坐っていた。あの日[#「あの日」はママ]、東隣にいる男が来て冗談に言った。
「君は独りいるが、鬼《ゆうれい》や狐はこわくないのかい」
桑は言った。
「男子が鬼や狐をこわがってどうする、もしくれば僕には剣があるさ、それも女なら門を開けて納《い》れてやるがね」
隣の男は帰って往ったが、その夜友達と相談して妓《げいしゃ》を伴《つ》れて往って、垣に
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