人は室に入って面白そうに話していた。そして枕についた時は蓮香はひどく駭《おどろ》いて言った。
「まあ、十日みないうちに、こんなにお体が悪くなったのですか、あなたはほかに好い方があるのでしょ」
桑は言った。
「どうしてそれが解る」
「私が神気でためしてみると、脈搏が乱れているのです、これは憑《つ》きものがしてるのですよ」
翌晩になって李がきた。桑は言った。
「ゆうべ蓮香を窺いたの、どうだったね」
李は言った。
「綺麗な方だわ、だけど、どうも人間にあんな綺麗な方はないと思ったら、やっぱり狐ですよ、私は蓮香さんが帰るとき、後からつけて往くと、南の山の穴へ入ったのですもの」
桑はそれは李のやきもちだろうと思ったので、いいかげんにあしらっていた。その翌晩になって蓮香が来た。桑は冗談に言った。
「僕はほんとうとは思わないが、ある人が君を狐だというのだよ」
「何人です、何人がそんなことを言ったのです」
と蓮香はせきこんで訊いた。桑は笑った。
「僕の冗談だよ」
蓮香は言った。
「狐だって、どこに人とちがうところがあります」
「狐は人を惑わすじゃないか、狐に憑かれて病気がひどけりゃ、死ぬるじ
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