っておる。子供と婚礼してもらいたいが、君は疑わないだろうか。」
 竇はそこで礼をいった。王は学士や大臣に命じて宴席に陪侍《ばいじ》さした。酒が闌《たけなわ》になった時、宮女が進み出ていった。
「公主のお仕度がととのいました。」
 供に三、四十人の宮女が公主を奉じて出て来た。公主は紅《あか》い錦《にしき》で顔をくるんでしっとりと歩いて来た。二人は毛氈《もうせん》の上へあがって、たがいに拝しあって結婚の式をあげた。
 式がおわると公主は竇を送って館舎に帰った。夫婦のいる室《へや》は温かで清らかであった。竇は公主にいった。
「あなたを見ると、ほんとに楽しくって、死ぬることも忘れるが、ただこれが夢でないかと心配するのです。」
 公主は口に袖をやっていった。
「私とあなたと確かにこうしているではありませんか。どうしてこれが夢なものですか。」
 朝になって起きると、竇はたわむれに公主の顔に白粉をつけてやった。竇はまたその後で帯で公主の腰のまわりをはかり、それから指で足のまわりをはかった。公主は笑って訊いた。
「あなたは気が違ったのではありませんか。」
 竇はいった。
「わたしは時どき夢のためにあや
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