詞を用いた。
「よし、それでは供をさせよう」
吏員の一人は紙筆を操《と》って※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]の前へ置いた。
「これに事実を書くがよいだろう」
※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]は事実を書こうにも犯した罪がないから書きようがない。
「私は、犯した罪がありませんから、書くことがありません」
王の声が頭の上へ落ちかかるように聞えた。
「その方は罪がないというが、あの一陌の金銭便ち魂を返す、公私随所に門を通ずべしは、何人の句だ」
※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]ははじめて地府を嘲った詩によって罪を得たことを知った。彼は筆を執った。
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伏《ふ》して以《おも》う、混淪《こんりん》の二気、初めて天地の形を分つや、高下三歳、鬼神の数を列せず。中古より降って始めて多端を肇《はじ》む。幣帛《へいはく》を焚いて以て神に通じ、経文を誦して以て仏に諂《へつら》う。是に於て名山大沢|咸《ことごと》く霊あり。古廟叢祠|亦《また》主者多し。蓋《けだ》し以《おも》ふ[#「ふ」はママ]に、群生昏※[#「執/土」、第4水準2−
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