檻楯《てすり》に掻きついた。
「放せ」
「何をする」
鬼卒達は※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]を引き放して曳きずって往こうとしたが、※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]は一生懸命に掻きついているのでなかなか放れない。
「しぶとい奴だ」
鬼卒達は無理にその手を引き放そうとした。と、その拍子に檻楯が折れた。※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]はもう犁舌の獄へ下らなければならなかった。彼は大声で叫んだ。
「令狐※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]は人間の儒士であります、罪がないのに刑を加えられようとしております、もし天がこれを見ておられるなら、どうか罪のないことを明かにしてください」
王の側に緑袍《りょくほう》を著て笏《しゃく》を持った者が坐っていた。緑袍の男はこれを聞くと、王の方へ向って言った。
「あの男は、人の陰私《いんし》を訐《あば》くことを好む者でございます、ただ罪を加えても伏しませんから、供書を取って、犯している罪を明かにするがよろしかろうと思います、そうすればとやかくいう詞《ことば》がないと思われます」
王はその
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