饌のつくり」、第3水準1−92−18]は驚いて走ろうとした。
「逃げようたって逃がすものか」
「こら」
 鬼使の一人は※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]の襟がみを掴み、一人はその帯際に手をかけた。※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]はそれを振り払って逃げようとした。彼は襟がみにかけた鬼使の手を掴んで引き放そうとしたが放れなかった。
「何をする」
「騒ぐな」
 ※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]の体は釣りあげられたようになって脚下《あしもと》が浮いた。※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]はどうすることもできなかった。
 鬼使は走るようにして歩いた。※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]の足はもう地べたに著かなかった。
 官省の建物のような大きな建物がきた。鬼使は※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]を連れてその門の中へ入った。
 ※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]は恐る恐る前を見た。殿上の高い処に一人の王者が冕《かんむり》を被り袍《ほう》を著て案《つくえ》に拠って坐っていた。その左右には吏
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