門の口には見るからに恐ろしい守衛がたくさんいた。皆牛の頭のように角のある顔の恐ろしい、それで体の青い紺色の髪の毛の、頭にも手足にももじゃもじゃと生えた者で、それがそれぞれ戟《ほこ》のような物を持っていた。それは立っている者もあれば坐っている者もあった。
 二人の鬼使は前《さき》に立って往って、かの帖を一人の守衛の前にさしだした。守衛は一眼見て頷いた。
 そこで一行は門の中へ入った。中からは遠濤《とおなみ》の音のような人の泣声が聞えてきた。それは物凄い、肉を刻まれ骨を砕かれる時のような叫びであった。※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]はもう足が縮《すく》んでしまった。
 物凄い叫喚の場処はすぐきた。黒い霧とも壁とも判らない物に四辺《あたり》を囲まれた中に、血みどろになった人がうようよといて、それがのたうって悶掻き叫んでいた。体の皮を剥《はが》れた者、腹を裂かれた者、手を切られた者、足を切られた者、眼を剔《えぐ》られた者、舌を抜かれた者、それはもう人間の感情を持っていては、ふた眼と見ることのできないものばかりであった。※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]は眼前が
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