少年のことを言った寵姫の首であった。
 秋壑はある時、数百艘の船に塩を積んでそれを販《ひさ》がした。すると詩を作ってそれを謗《そし》った者があった。
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昨夜|江頭《こうとう》碧波《へきは》を湧かす
満船|都《すべ》て相公の※[#「鹵+差」、279−16]《しお》を載す
雖然《たとい》羮《こう》を調《ととの》うるの用をなすことを要するも
未だ必ずしも羮を調《ととの》うるに許多《おおき》を用いず
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 秋壑はそれを聞いて、その詩を作った士人を誹謗《ひぼう》の罪に問うて獄に繋《つな》いだ。
 秋壑はまたある時、浙西《せつせい》に於て公田《こうでん》の法を行うたが、人民がその悪法に苦しんだので路傍へそれを謗った詩を題した者があった。
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嚢陽《じょうよう》累歳《るいさい》孤城《こじょう》に因る
湖山に豢養《けんよう》して出征せず
識らず咽喉《いんこう》形勢《けいせい》の地
公田|枉《ま》げて自ら蒼生《そうせい》を害す
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 秋壑は怒って誹謗者を遠流に処した。
 秋壑はまたある時、千人の僧に斎《とき》をした。僧
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