《ていこしん》という者のために拉殺《らつさつ》せられた。
ある時、一人の船頭があって蘇※[#「こざとへん+是」、第3水準1−93−60]《そてい》に舟がかりをしていた。夏の暑い盛りで睡られないので、起きあがって窓の所に顔をやり、見るともなしに舟の著いている磧《かわら》の水際の方へ眼をやった。尺に足りないような不思議な人間が三人いた。船頭は眼を瞠ってそれを覗いていた。するとそのうちの一人の声がした。
「張公が来た、どうしたらいいだろう」
すると他の声が言った。
「賈平章《こへいしょう》は、仁者でないから、どうしても恕《ゆる》してくれないよ」
すると、また他の違った声がした。
「乃公《おれ》はもう万事休すだ、お前さん達は、乃公のやられるのを見るだろう」
隠々と泣く声が聞えてきたが、やがて三人の者は水の中へ入って往った。
その翌日、漁師の張公という男が、蘇※[#「こざとへん+是」、第3水準1−93−60]で一疋の※[#「敝/龜」、282−3]《すっぽん》を獲ったが径《さしわたし》二尺あまりもあった。漁師はそれを秋壑の第《やしき》に持って往って売った。秋壑の失敗はそれから三年にならな
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