いうちに作《な》った。
少女はそれからそれと秋壑のことを話した。趙源はその話を聞いた時にこんなことを言った。
「人はそれぞれ数がある、あなたとこうしておっても、その数が尽きると別れなくちゃならない、それともあなたには、普通の人でないから、最後まで私といっしょにおることができますか」
「私でも、その数を逃れることはできません、三年すれば、私の数も尽きます」
少女はこう言って悲しそうな顔をした。
三年すると女は体が悪いと言って床に就いた。源は医者にかけてよいものならかけたいと思ったが、女は承知をしなかった。
「もうあなたとの縁がつきて、お別れする時になりましたから」
女は源の臂《ひじ》を握った。
「ながなが御厄介をかけました、私はこれで前世の思いを果しましたから、思い残すことはありません、これでお別れいたします」
女は顔を壁の方に向けたままで歿《な》くなってしまった。源は棺桶を買ってきて泣き泣き女の死骸を中に納めて送り出そうとしたが、棺は空の時の重さと少しも変らなかった。不思議に思って蓋を開けてみた。中には衣衾釵珥《いきんさいじ》があるのみであった。
源はやがてそれを北山の麓に
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