だ笠を着けて、手の付いた笊《ざる》に瓜《うり》のような物を入れ、それを左の肱《ひじ》にかけているが、蒲留仙を見つけると皮肉な眼付をする。
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村の男 先生と張公の媽媽《かか》じゃ、辛抱がええわえ。今年でもう六年じゃ、毎日毎日、あの坂の上で、張公の帰りを待ってるが、なんぼ待ったところで、水に溺れて死んだ者が戻るもんか。気違いじゃからしかたがないが、考えてみりゃ、可哀いそうなもんじゃ。……時に先生、近頃は面白い話が聞けますか。
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蒲留仙はやっと眼を開けたが、村の男の顔は見ずにめんどくさそうにいう。
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蒲留仙 ……うむ、……うむ、話もね……。
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そして淡巴菰の火が消えているのに気が注《つ》いたようにして、足許の燃えさしに吸いつけて喫《の》む。村の男はそのさまをじろじろと見る。
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村の男 ほんとに学者という者は、辛抱がええな。あの赤い星が、雷のよ
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