》の骨が張って、そのうえ口鬚が生えてりっぱな顔になりましたが、それからまた一年半ばかりすると、また夢に鬚の白い黒い冠を着けた老人が、長い塵尾《ほっす》を持って、金甲神を伴れて来て、お前の腹を易えてやろう、といったかと思うと、伴れている金甲神が、もう刀を抽《ぬ》いて、周の腹を裂いて、その臓腑をだして滌《あら》って、もとの通りに収め、その上に四角な竹の笠を伏《ふ》せ、釘をその四隅に打ったが、その椎《つち》の音が周の耳に響くがすこしも痛くはなかったそうですよ。【三ぷく目の淡巴菰を詰めて、またそれに火をつけて吸いだす】そこで釘が終ると、老人は塵尾を揮って、「清虚鏡に似たり、元本塵無し」といったのですが、周の夢はそれと一緒に醒めたのですが、それから周の文学が急に進んで、終《つい》に侍講学士になったというのです。これは秀才のいったことですから、無学な旅人などのいった話と違いますよ。
蒲留仙 うむ、そうだろう、面白い話だ、いい話だ。
葉生 さっきの話とは違いますよ。
蒲留仙 違う、いい話だ。では忘れないうちに書いて置こうかね。
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蒲留仙は煙管を置いて左側を向き、静かに筆を執《と
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