の》んで、ちょっと話にかからない。蒲留仙はゆっくりと淡巴菰の煙を吹かす。
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葉生 その話はね、先生、周立五《しゅうりつご》という男の話ですがね、その男は、顴骨《かんこつ》がひっこんでて、頤《あご》がすっこけ、口鬚《くちひげ》も生えないで、甚だ風采《ふうさい》のあがらないうえに、三十二になっても、童子の試にとおらないという困り者でしたが、お父さんに随《つ》いて荊南へ行って、南城の外倉橋の側に宿をとっていると、夢に雉冠絳衣《ちかんこうい》の人が来て、その人は右の手に刀を持ち、左の手に鬚のある首を持っているのですが、その人が周の榻《ねだい》の前へ来るなり、いきなり周の首を斬って、手に持っていた首と易《か》えて行ったので、周はびっくりしてお父さんの足にだきつき、大声をあげたから眼が覚めたのです、眼を覚して、首を撫でてみますと、べつに異状もないので安心したのです。【話し話し吸殻《すいがら》を吹いて、二ふく目の淡巴菰を詰め、それに火をつけて旨《うま》そうに吸い】ところで、その周ですが、それから数日すると、顴骨が高くなり、頤《あご
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