憮《けいちょうびぶ》の話でしょう、女の児を刺した話は。
蒲留仙 そうだね、似た話だね。
葉生 あれですよ、【二はい目の茶を入れながら】あの話があちこちに伝わっているまに、あんなになったのですよ。
蒲留仙 しかし、それでもいいよ。人の頭をあちこちと潜っていると、違った味のある話になることがあるからね。君は、また何か面白い話を聞いて来てはいないかね。
葉生 一つ面白い話がありますよ。それを話しに来たのです。
蒲留仙 そうかね、それはありがたい。
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蒲留仙は思いだしたように煙管の雁首の方を膝の上に持って来て、新らしく淡巴菰を詰める。
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葉生 私も淡巴菰をいただきますよ。【急いで茶を飲んでしまって、旅人の持っていた煙管を取って淡巴菰を詰め、それに火をつけて、壷の隣へ行って腰をかけ】先生、昨夜聞いた話ですがね。
蒲留仙 そうかね。
葉生 莱州《らいしゅう》から来た秀才の話ですから、つまらない旅人の話とは違いますがね。
蒲留仙 そりゃそうだろう。
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葉生は淡巴菰をうまそうにすぱすぱ喫《
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