あ、君か。
葉生 先生お暑いじゃありませんか。【と、茶の方に眼をやって】早速ですが、お茶を一ついただきますよ。
蒲留仙 いいともおあがり。
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旅人二人は話の腰を折られて不快な顔をして見せたが、それとともに遠い行手を思いだしたように、
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旅人甲 それじゃ、もう出かけようか。
旅人乙 そうじゃ、出かけよう。
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そこで旅人甲は空《から》になった碗を持ち、旅人乙は煙管を持って起って、蒲留仙の前へ行って、それぞれもとの所へ置いた。葉生はもう自分で茶を入れて起ったなりに飲んでいる。
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旅人甲 どうもありがとうございました。
旅人乙 どうも御馳走になりました。
蒲留仙 どうもありがとう、いい話を聞いた。ではお大事に。
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旅人は会釈してから荷物の所へいき、笠を着け、荷物をはじめのようにして出ていく。
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葉生 先生、今の話は、京兆眉
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