た。従者はいいつけ通り、後からそれをつけていって、人中で女の児の顔を切ってから逃げましたが、後十四年たってその男が高官にのぼったので、刺史をしていた人が娘をくれましたが、その女は綺麗でしたが、平生も眉間《みけん》へ鈿《かんざし》をさげているので、気をつけてみると眉間に傷痕《きずあと》があります、聞きますと、三つの歳に乳母《うば》に抱かれて市中を歩いていて、狂賊に刺されたといいますから、乳母の容貌を聞きますと、めっかちであったといったそうですよ。
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その時いつの間に来たのか葉生が来て、下手の入口を入った[#「入った」は底本では「入つた」]所に立っていたが、いたずらそうな碧眼をぐるぐるやると共に口をだした。
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葉生 そりゃ京兆眉憮《けいちょうびぶ》よ。【葉生は得意そうにして、蒲留仙の前へ来て】先生、今日は、他に何かいい話がありましたか。
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蒲留仙は葉生の胴の方から見あげて、ちらっとその顔を見る。
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蒲留仙 あ
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