。海石はその獣をつかまえて袖の中に納《い》れ、次男の※[#「女+息」、第4水準2−5−70]の方を向いて言った。
「あなたはひどく毒を受けていらっしゃる、背にかわったことがあるでしょう、見ましょう」
※[#「女+息」、第4水準2−5−70]は羞かしがってどうしても肩ぬぎにならなかった。それを次男が強《し》いてぬがしてみると、背の上に四寸ばかりの白い毛が生えていた。海石は針でその毛を抜きとって言った。
「この毛はもう古くなっているから七日おくれたなら、助からないところでした」
また次男の背を見た。その背にも二寸ばかりの白い毛が生えていた。海石は言った。
「これは、一月あまりすると死ぬところだった」
滄客はそこで婢や僕の背も調べてもらった。海石が言った。
「僕《ぼく》がもしこなかったら、君の一家族は全滅するところだったよ」
滄客は海石の袖の中に納れた獣のことを訊いた。
「それは何だね」
海石は言った。
「狐の類だよ、人の神気を吸うて、不思議なことをする奴なんだから、人の死ぬのを喜ぶのだよ」
滄客が言った。
「久しく逢わなかった間に、君は不思議なことをやりだしたが、君は仙人になっ
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