見えていたが、その中に※[#「さんずい+徑のつくり」、第3水準1−86−75]川の畔で見たかの女の姿があった。
「※[#「さんずい+徑のつくり」、第3水準1−86−75]川の囚人が帰ってきた」
 洞庭君は嬉しそうに言った。女達の姿は紫の霞に隠れたり見えたりしながら宮中の方へ流れるように行った。
 洞庭君はちょと席をはずして宮中の方へ引込んで行ったが、すぐ出てきて毅の相手になった。紫の袍を来て青玉を持ったいかつい顔の貴人が、いつの間にか洞庭君の傍へ来て立った。洞庭君は毅に言った。
「これがわしの弟の銭塘じゃ」
 毅は起って行って拝《おじぎ》をした。銭塘君も毅に礼を返した。
「先生がなかったなら、女姪《めい》は※[#「さんずい+徑のつくり」、第3水準1−86−75]陵《けいりょう》の土となるところであった」
 銭塘君は傲然として言ってから、今度は洞庭君の方を見た。
「さっきここを出てから、巳《み》の時に※[#「さんずい+徑のつくり」、第3水準1−86−75]陵へ行って、午《うま》の時に戦って、帰りに九天へ行って、上帝にその訳を訴えてきました」
「どれくらい殺した」
「六十万」
「稼《か》を
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