柳毅伝
田中貢太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)柳毅《りゅうき》

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+徑のつくり」、第3水準1−86−75]
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 唐の高宗の時に柳毅《りゅうき》という書生があった。文官試験を受けたが合格しなかったので、故郷の呉に帰るつもりで※[#「さんずい+徑のつくり」、第3水準1−86−75]川《けいせん》の畔《ほとり》まで帰ってきたが、その※[#「さんずい+徑のつくり」、第3水準1−86−75]川の北岸に同郷の者が住んでいた。毅はまず知人の許《もと》へ立ち寄り、やがて別れて六七里も行ったところで、路傍におりていた鳥の群がばたばたと立って飛んだので、馬がその羽音に驚いて左へそれて走った。そして六七里も矢のように行ったかと思うと、ぴったり止ってしまった。柳毅は馬の頭を向けなおして本道へ出ようとして、ふと見ると羊を伴《つ》れた若い女が路ぶちに立っていた。それは品のある綺麗な女であったが、何か悲しいことでもあるの
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