君に従うて、天帝の許へ朝した時、聖者達が数年の後に戦乱が起って、巨河《きょか》の南、長江の北で、人民が三十余万殺戮せられるということを話しあっていたが、この時になっては、自ら善を積み、仁を累《かさ》ね、忠孝純至の者でないかぎり、とても免れることはできない、まして普通一般の人民では天の佑《たすけ》が寡《すくな》いから、この塗炭《とたん》に当ることがどうしてできよう、しかし、これは運数が已に定まっているから、これを逃れることはできないが、諸君はどう思う」
判官達は顔を蹙《しか》めて、顔を見合わしたが、
「それは吾々の知ったことじゃない」
「それは判らない」
「吾々はそんなことは知らない」
などと口々に言って外へ出たが、どこかへ往ってしまった。
友仁は案の下から匍匐《ほふく》して出て、拝《おじぎ》をしてから言った。
「私は宵からまいりまして、自分の将来のことをお願いしておきましたが、私は将来どういうようになりましょう」
発跡司の判官はじっと友仁の顔を見ていたが、やがて側にいた小役人を呼んで帳簿を持ってこさして、それを自分で開け、ちょっと考えてから言った。
「君は大いに福禄《ふくろく》
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