富貴発跡司志
田中貢太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)至正丙戌《しせいへいじゅつ》の年

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)今|已《すで》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「足へん+全」、221−13]伏《せんぷく》
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 至正丙戌《しせいへいじゅつ》の年のことである。泰州に何友仁《かゆうじん》という男があって、学問もあり才気もあり、それに家柄もよかったが、運が悪くて世に出ることができないので、家はいつも貧乏で困っていたが、その年になってまた一層の窮乏に陥り、ほとんど餓死しなくてはならないという境遇に立ち至った。で、友仁は城隍司《じょうこうし》に祷《いの》って福を得ようと思って、ある夜その祠《ほこら》へ往った。
 その祠にはそれぞれ司曹《しそう》があって、祈願の種類に依ってそれを祷ることになっていた。祠の左右の廡下《のきした》に並んだ諸司にはそれぞれ燈火が点《つ》いて、参詣の人びとはその前へ跪いて思い思いに祈願をこめ
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