がくる、もうそう長いこと貧乏しなくてもいい、これから日に日によくなってくる」
 友仁は喜んだ。しかし、もすこしはっきりしたことが聞きたかった。
「お言葉をかえしてはすみませんが、日に日によくなると申しますと、どういうようによくなりましょう、もすこし精《くわ》しいことをお聞かせくださいますことはできますまいか」
「そうか、では、精《くわ》しいことを知らしてやろう」
 主神は朱筆を持って傍の紙へ書いて、それをさし出したので、友仁は恐る恐る受け取った。それには大字で『日に偶うて康《やす》く、月に偶うて発し、雲に遇うて衰え、雷に遇うて没す』と書いてあった。友仁はそれもはっきりとは判らないが、あまり聞くもわるいと思ったので、それを懐へ入れて前をさがり、廟門の外へ出た。
 外はもう夜が明けていた。友仁はさっきの書付をもう一度見ようと思って、懐に手をやったがどうしたのかなくなっていた。

 友仁は家へ帰って、妻子に発跡司の判官の讖言《しんげん》のことを話して喜んでいた。
 間もなく都の豪家の傅日英《ふじつえい》という者が、子弟を訓《おし》えてくれと言って頼みに来た。そこで友仁は日英の家へ移って、月俸
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