んじん》から本司に上申してきたから、府君に呈したが、もう天庭に奏文して、寿《いのち》を三紀《みまわり》延べて、禄を万鐘賜うた」
「―村の―氏は、姑《しゅうとめ》に孝行で、その夫が外へ往っていて、姑が重い病気に罹《かか》り、医巫《いふ》も効がないので、斎戒沐浴《さいかいもくよく》して天に祈り、願わくば身をもって代りたいといって、股《もも》を割いて進めたから、病気が癒った、で、さっき天符がさがって、―氏の孝行が天地に通じて、誠を鬼神に格《いた》したから、貴人になる児《こども》を二人生まして、皆君の禄を食《は》んで、家の名をあげ、終《つい》に大夫の命婦としてこれに報いるということになったので、府君が本司にくだして、今|已《すで》に之を福籍《ふくせき》に著《あら》わした」
「―姓―官は、爵位が崇《たっと》く、俸禄が厚いに係わらず、国に報ぜんことを思わないで、惟《た》だ貪饕《たんこう》を務めて、鈔金《しょうきん》三百錠を受け、法を枉《ま》げて裁判をし、銀五百両を取って、理を非に枉げて良民を害したから、府君が上界に奏して、罪を加えようとしておるが、彼は先世に陰徳があって、姑《しばら》く不義の富貴を
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