りょう》を持ち、才能があり、立派な家柄があって、何も身分の貴《たか》い婿がなくっても好いでしょう。身分の貴い家の子供は、いばってていうにたりないですよ。もし佳《い》い夫を得たいと思うなら、貧乏人とか金持ちとかいわないが好いでしょう。」
 十一娘はそのとおりであるといった。三娘がいった。
「昨年あなたと逢った処で、今年もまたおまつりがありますから、明日どうかいってください。きっとあなたがお気にいる旦那様をお見せしますから。私はすこし人相の本を読んでます。あまりはずれたことがないのです。」
 朝まだ暗いうちに三娘は帰っていった。帰る時二人は水月寺で待ちあわす約束をした。
 やがて十一娘がいってみると三娘はもう先に来ていた。二人はそのあたりを眺望して境内を一めぐりした。十一娘はそこで三娘を自分の車へ乗せて帰っていった。寺の門を出たところで一人の少年を見かけた。年は十七、八であろう。布の上衣を着た飾らない少年であったが、それでいてその容儀にきっとしたところがあった。三娘はそっと指をさしていった。
「あれは翰林学士《かんりんがくし》になれる方ですよ。」
 十一娘はひとわたりそれを見た。三娘は十一
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