ことが聞えて来た。孟はひどく歎いて、美しい人について一緒に死ななかったことを恨んだ。
 孟は夜の暗いのをたよりに十一娘の墓へいって、心ゆくばかり哭《な》こうと思って、夜、家を出て歩いていると、向うからきっとなって来た者があった。擦《す》れ違おうとしてみるとそれは三娘であった。三娘はいった。
「結婚ができるのですよ。」
 孟は泣いていった。
「あなたは、まだ十一娘が亡くなったのを知らないですか。」
 三娘はいった。
「私ができるというのは、亡くなったからですよ。早くお宅の方を呼んで来て墓をお掘りなさい。私が不思議な薬を持っておりますから、かならずいきかえるのです。」
 孟はその言葉に従った。墓を掘り棺を破って十一娘の屍《しかばね》を出し、穴をもとのように埋めて、自分でそれを負《せお》って三娘と一緒に帰り、それを榻《ねだい》の上に置いて三娘の持っていた薬を飲ました。時がたってから十一娘はいきかえって、三娘を見ていった。
「ここはどこです。」
 三娘は孟に指をさしていった。
「ここは孟安仁の家ですよ。」
 三娘はそこで故《わけ》を話した。十一娘ははじめて夢が醒《さ》めたようになった。三娘はそ
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