十一娘とあなたが結婚ができるように、人の氷《なこうど》になりたいと思って来たのです。」
孟はびっくりしたが、しかしほんとうにはしなかった。三娘はそこで釵を出して孟に見せた。孟はとめどもなしに喜んだ。そして誓《ちか》っていった。
「こんなにまでしていただきながら、十一娘を得ることができなかったなら、私は一生|鰥《やもめ》で終ります。」
三娘はとうとういってしまった。翌朝になって孟は、隣の媼《ばあ》さんを頼んで范《はん》夫人の所へいってもらった。范夫人は孟が貧乏人であるから、女《むすめ》にはからないでそのままことわってしまった。十一娘はそれを知って心に失望すると共に、ひどく三娘が自分をあやまらしたことを怨んだ。しかし金の釵はもう返してもらうことはできない。十一娘はそこで死んでも孟と結婚しようと決心した。
数日して某|縉紳《しんしん》の子が十一娘に結婚を申しこむことになったが、普通の手段では諧《ととの》わないと思ったので、邑宰《むらやくにん》に頼んで媒灼《ばいしゃく》してもらった。その時その縉紳は権要の地位にいたから、范祭酒は畏れて結婚させようと思って十一娘の考えを訊いた。十一娘は苦し
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