好い、よせ、俺は手前達に、おどかされるやうな男ぢやない、ぐづ/\いふと承知しないぞ、」
「さうだつか、あたいも承知しまへんがな、あんたが江戸つ子なら、あたいは大阪つ子や、」
「手前は、俺に向つてそんなことをいふのか、承知しないぞ、野郎、」
「そないなことをいうて、おどかしたかて、あたい、こはくはありまへんがな、」
「よし、好い、野郎、出て来い、外へ出よう、」
清はこんな無礼なことをそのまゝにして置いては、この先しめしが利かなくなると思つた。彼は懐に手を入れて背後を向いて強ひて笑つた。
「姉さん、幾等になる、」
女中は見附の台の傍に立つて、帳場のお神さんと口を利いてゐたが、勘定と聞いてやつて来た。
「一円九十五銭になります、」
清は金を出した。
「よし、勘定が二円、これは姉さん、」
女中に五十銭札を置いてから、安三を睨むやうにして腰をあげた。
「出よう、」
安三も肩を聳かしてゐた。
「出まつせ、」
清は先に立つて出ながら安三を尻目にかけた。
二人が外へ出て迫つた感情をぴつたり並べたところで、一人の男がそゝくさやつてきた。
「や、松原さんだつか、えゝところや、」
清は聞き覚
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