うがくたいざん》の神、金天府は西岳華山《せいがくかざん》の神で、泰山の神の神意によって張はもう死人の籍へ入れられていた。悪人の張も恐れて顔色が土のようになった。
「私は一家一門が広いから、後の始末をせずに死ぬると、大変なことになる、今、私の嚢《ふくろ》の中には、数十万の金があります、これを差しあげますから、私の生命が延びるようにしてください」
 張は泣きだしてしまった。黄いろな服の男は言った。
「金はいりません、今日のお礼に教えてあげましょう、華山の蓮花峰《れんげほう》の下に、劉綱《りゅうこう》という仙人がおります、そこへ往って頼みなさい、それに華山の神が、南岳の衝山《しょうざん》の神と博奕《ばくち》をやって負け、その金を催促せられておりますから、まず華山廟へ往って、お礼に千金を献じますと言って、約束してから仙人の処へ往きなさい、なんとかなりますよ」
 そこで張は車をかまえて華山廟へ往き、牲牢《せいろう》を供え、千金を献上すると言って祈願し、それから蓮花峰の下へ往った。小さな庵があって、一人の道士が机によって坐っていたが、張を見ると、
「死んで体が腐りかかっているものが、なにしにここへ
前へ 次へ
全6ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 貢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング