賭博の負債
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)博奕《ばくち》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)嘘|吐《つ》き
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徳化県《とくかけん》の県令をしていた張《ちょう》という男は、任期が満ちたのでたくさんの奴隷《どれい》を伴《つ》れ、悪いことをして蒐めた莫大な金銀財宝を小荷駄にして都の方へ帰っていた。
華陰《かいん》へきた時、先発の奴僕《げなん》どもは豚を殺し羊を炙《あぶ》って、主人の張の着くのを待っていた。黄いろな服を着た男がどこからきたともなしに入ってきて、御馳走のかまえをしてある処へ坐った。
「お前さんは、たれだ、そんな処へこられては困る、もう張令のお着きになる時分だ」
奴僕の一人は豪《えら》い権幕で言ったが、黄いろな服の男は平気な顔をして動かない。ところへ張が着いた。奴僕どもはしかたなく皆でその男に手をかけて掴み出そうとした。
「おけ、おけ、そんなことをしなくってもいい」
張は奴僕を制して黄いろな服の男に向って聞いた。
「君は、どこから来たのだね」
黄いろな服の男は頷いて見せたが何も言わなかった。張は不思議な
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