呉門という処に宿をとって滞在していた。
 その時世高と秀英の二人も、やはり張士誠の軍士の城内に侵入するのを避けて、群集に交って呉門まで逃げて往ったが、一軒の宿を見つけて入ろうとしたところで、劉万戸に似た老人がその入口に立っていた。秀英がそれを見て世高に囁いた。
「あれは、お父様ですよ、どうしてここにいらっしゃるのでしょう」
 そこで世高は劉万戸の前へ往った。
「先生は杭州の方ではございませんか」
 それは確かに劉万戸であった。世高はひっかえしてそれを秀英に囁いた。そして、二人は別室へ入ったが、秀英は母に遇いたいので、世高の止めるのも聞かずに、その夜両親の室の前へ往って泣いていた。
 劉万戸夫婦は女の泣声を聞きつけて、秀英の声に似ていると言っていたが、とうとう起きてきて扉を開けた。そして、夫人は秀英の姿を見てもしや鬼《ゆうれい》ではないかと思ったが、懐かしいので抱きかかえた。
 劉万戸は人をやって、天笠山麓《てんりゅうざんろく》の墓をあばかしたところで、中には何もなかったので、はじめて世高と秀英の詞《ことば》を信用した。
 そして、皆でそこに滞在しているうちに、張士誠の軍が敗れて、路がや
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