人は泣きながら自分たちの寝室の中へ入って往った。そこには夫の劉万戸がまだ寝ていた。劉万戸は夫人から凶変を聞くと、顔色を変えてとび起き、そそくさと花園へ駈けつけた。
花園には若い男と自分の女《むすめ》が醜い死屍《しがい》を横たえていた。劉万戸は自分の頭へ糞汁をかけられたような憤《いかり》をもって、その死屍を睨みつけていたが、ふと二人の関係が知りたくなった。傍には春嬌が蒼い顔をして立っていた。
「春嬌、きさまが知っているだろう、さあ言ってみろ」
春嬌はおどおどしていたが、黙っている場合でないと思った。
「私は、私は、すこしも存じません、それは施十娘がしたことでございます」
劉万戸は後になってつまらんことを聞いてもしかたがないから、早く死骸の始末をしようと思いだした。それにしても名も素性も判らない男の死骸の始末には困ったのであった。彼は夫人を見て言った。
「これの死骸はいいとして、その男の方はどうしたものだろう」
劉万戸はそこで施十娘のことを思いだした。
「いずれにしても、あの婆を呼んでこい、施十娘を呼んでこい」
劉万戸の命令は春嬌の口から家人へ伝えられた。二人の家人は走って施十娘
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