の光が朽ち腐れて塵の中に埋れている仏像などを照らしていた。大異はどこか隠れる所はないかと思って注意した。壇の上に仁王《におう》のような仏像が偉大な姿を見せていた。大異は壇の上へ飛びあがって、その仏像の背後《うしろ》へ往った。仏像の背には人の入れるような穴が鑿《ほ》ってあった。大異は身を屈めてその中へ這い込んで往った。
その穴は仏像の腹の所で拡がっていて、体を置くにはちょうどよかった。大異はここにおれば大丈夫だろうと思って、やや安心しながら穴の口へ注意していた。と、仏像の腹を外から木のような物で叩く音がした。
「あいつは、つかまえようとしてもつかまえられないが、俺はつかまえようともしないのに、むこうからつかまりにきたぞ」
それは仏像が両手で腹つづみを拍《う》って嘲笑っているのであった。
「今晩は好い点心《てんしん》にありついた、斎《とき》はいらないぞ」
仏像は背延びをするようにしてのろりのろりと歩きだしたが、十足ばかり往ったところで閾《しきい》に礙《ささ》えられたようにひっくり返って大きな音をさした。仏像はそれがために砕けてばらばらになって、大異は外へ放り出されてしまった。大異は驚
前へ
次へ
全19ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 貢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング