太虚司法伝
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)馮大異《ひょうたいい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大|胯《また》に歩いて
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「休+鳥」、第4水準2−94−14]※[#「留+鳥」、第4水準2−94−32]《ふくろう》
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馮大異《ひょうたいい》は上蔡《じょうさい》の東門にある自分の僑居《すまい》から近村へ往っていた。ちょうど元の順帝の至元丁丑《しげんていちゅう》の年のことで、恐ろしい兵乱があった後の郊外は、見るから荒涼を極めて、耕耘《こううん》する者のない田圃はもとの野となって、黄沙と雑草が斑《まだ》ら縞を織っていた。兵燹《へいせん》のために焼かれた村落の路には、礎《いしずえ》らしい石が草の中に散らばり、片側が焦げて片側だけ生きているような立木が、そのあたりに点在して、それに鴉のような黒い鳥が止まって侘しそうに鳴くのが聞かれた。
斜陽《ゆうひ》に影をこしらえて吹いてくる西風
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