なれば、独り鬼神がないというのじゃ、俺はその方から久しい間、侮辱を受けていたから、今日こそその復讐をする」
 大王はそう言ってから命令した。
「まず※[#「木+垂」、第3水準1−85−77]楚《むち》をやれ」
 大異は冠も衣裳も剥がれて、裸にせられて鞭を加えられた。みるみる肉が破れて全身は血みどろになった。大王はそれを見て言った。
「鞭が厭なら、泥を調《ね》って醤《したじ》をこしらえるか、それとも身のたけ三丈の鬼になるか、どっちでもその方のいい方にするがいい」
 大異は早く鞭を逃れたいと思ったが、泥を調って醤をこしらえることはできないので三丈の鬼になろうと思った。
「どうか鬼にしてくださいますように」
 大王は笑った。
「鬼になるか、よし、よし、では皆で三丈の鬼にしろ」
 大異の体はそのまま石床の上へ横倒しにせられた。怪しい者たちは、その大異の体へそれぞれ両手をかけて搓《も》みだした。俯向けにしたり、横にしたり、そうしてせっせと搓んでいると、その体がずんずんと延びてきた。
 大異の体は皆の手に支えられて起された。それは竹竿を立てたような長い長い体になって、独りでは動くことも立っているこ
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