な焔を吐いていた。
「とうとう讐《かたき》をつかまえた」
「そうだ、めでたいことじゃ」
「早速大王の前へ連れて往こう」
 大異の頸には鉄組《くさり》が繋《かか》り、腰には皮※[#「糸+率」、264−7]《かわひも》が※[#「てへん+全」、264−7]《つ》いた。大異はもうどうすることもできなかった。
「こっちへこい」
「歩け」
 大異の体へひどい力が加わった。大異は痛いのでしかたなしに歩いて往った。
 すぐ一つの庁堂があって、その正面には大王であろう、奇怪な姿の者が坐っていた。怪しい者たちはその前へ大異を連れて往った。
「吾が徒を凌辱する狂士を連れてまいりました」
 大王は頷いて大異を睨みつけた。
「その方は五体を具えて、知識がありながら、どうして鬼神の徳の盛んなことを知らないのじゃ、孔子は大聖人であるけれども、なお敬して之を遠ざくと言ったではないか、大易《たいえき》には鬼を一車に載すということを言い、小雅には鬼となし※[#「虫+或」、266−1]《よく》となすという文句がある、また左伝には晋景《しんけい》の夢や伯有《はくゆう》のことを書いてある、これは皆物があるからじゃ、その方は何者
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