った。それをだんだん釜の中に入れて烈火で鎔《と》かし、鬼は数疋の仲間に、杓をもってそれを曾の口に灌《そそ》がした。頤《おとがい》を流れると皮膚が臭い匂いをして裂け、喉に入れると臓腑が沸きたった。曾は平生その金のすくないのを患《うれ》えていたが、この時にはその金の多いのを患えたのであろう。
 半日でそれが尽きた。王は曾を送って甘州へ往って女にした。五足六足往くと、架《たな》の上に鉄の梁があった。そのまわりは数尺であったが、それには一つの大きな輪を繋いであった。その大きさは幾百|由旬《ゆじゅん》ということが解らなかった。それには燈《ほのお》があって五色のあやをつくり、その光は空間を照らしていた。鬼は曾を鞭で敲いてその輪に登らした。曾はしかたなしにそれに登った。と、輪は足に随ってまわって、傾いて堕ちたような気がすると共に、体が涼しくなった。眸《ひとみ》を開けてみると自分はもう嬰児《あかんぼ》になっているうえに、しかも女になっていた。両親はと見ると綿の出た破れた衣服《きもの》を着ていたが、そこは土間の中で、瓢《ひさご》と杖があるのみであった。曾は心で、自分は乞食の子であるということを知った。

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