「公主はお馬でお疲れになっておりますのに、それでも鞦韆をあそばされますか」
 女郎は笑って頷いた。とうとう侍女達はその公主を肩に乗せ、臂を捉《と》り、裾を※[#「寨」の「木」に代えて「衣」、第3水準1−91−84]《から》げ、履《くつ》を持って鞦韆の上に乗せた。公主は白い腕を舒《の》べ、端《さき》の尖った※[#「尸+徙」、第4水準2−8−18]《くつ》をはいて、軽く燕の飛ぶように空を蹴って、雲の上まで身《からだ》を飛ばしていたが、間もなくやめて侍女達に扶《たす》けられて下におりた。侍女達は口ぐちに言った。
「公主は真《ほんとう》の仙人でございます」
 そして皆で※[#「口+喜」、第3水準1−15−18]々《きき》と笑いながら往ってしまった。陳は花苑の中から女達の方を見ているうちに、魂がぬけでたようになっていたが、そのうちに人声がもうしなくなったので、這い出して鞦韆の架の下へ往き、そのあたりを歩きながら女のことを考えていた。籬《かき》の下に紅い巾《てふき》の落ちているのが見えた。陳は女の何人《だれ》かが落して往ったのだろうと思って、喜んで袖の中に入れて、亭の中へあがって往った。そこには
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