うことをさとった。そこで陳は訊いた。
「きみは、どうしてそれを精《くわ》しく知っているのです」
公主は言った。
「あの日洞庭で、小さな魚がいて、尾を銜んでいたでしょう、それがこの私です」
陳はまた訊いた。
「殺しもしないのに、なぜぐずぐずして早く赦してくれなかったのです」
公主は笑って言った。
「あなたを愛しておりましたが、ただ自分勝手にできないものですから、一晩中心配しておりました、他の人の知らないことですから」
陳は歎息して言った。
「きみは、僕のための鮑叔《ほうしゅく》だ、そして、あの食物を持ってきてくれた者は、何人ですか」
公主は言った。
「阿念《おねん》といいます、これも私の腹心の者です」
陳は言った。
「何をもって私に報いてくれます」
公主は笑った。
「あなたを長いことお待ちしました、これから責めをふさぐようにしても、おそくはないでしょう」
陳は訊いた。
「大王は何所にいらっしゃるのです」
公主は言った。
「関帝に従って蚩尤《しゆう》の征伐に往って、まだ帰りません」
四五日いるうちに、陳は自分の家のことが気になってしかたがないので、そこでまず平安無事を報
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