ぐ》んでやった。
八、九年してから成が忽然《こつぜん》として周の所へ来た。それは黄な巾《ずきん》を冠《かぶ》り鶴の羽で織った※[#「敞/毛」、第3水準1−86−46]《しょう》を着た、巌壁の聳《そび》えたったような道士姿であった。周は大いに喜んで臂《うで》を把《と》っていった。
「君はどこへいってた。僕はどんなに探したかわからないよ。」
成は笑っていった。
「僕は狐雲野鶴《こうんやかく》だ、どこときまった所はないが、君と別れた後も幸に頑健《がんけん》だったよ。」
周は酒を出して二人で飲みながら別れた後のできごとなどを話し、成に道士の服装を易《か》えさせようとしたが、成は笑うだけでこたえなかった。周はそこでいった。
「馬鹿だなあ。君はなぜ細君《さいくん》や子供を敝《やぶ》れ※[#「尸+徙」、第4水準2−8−18]《くつ》のように棄《す》てたのだ。」
成は笑っていった。
「そうじゃないよ。向うから人を棄てようとしているのだ。こっちから人を棄てやしないよ。」
周は問うた。
「ではどこに棲《す》んでる。」
成は答えた。
「労山《ろうざん》の上清宮だよ。」
そのうちに夜になったので
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