《ともしび》の光がきらきらと輝いて、細君はまだ寝ずに何人《なんぴと》かとくどくどと話していた。周は窓を舐《な》めて窺《のぞ》いてみた。そこには細君と一人の下男とが一つの杯《さかずき》の酒を飲みあっていたが、その状《さま》がいかにも狎褻《おうせつ》であるから周は火のようになって怒り、二人を執《とら》えようと思ったが、一人では勝てないと思いだしたので、そっと脱けだして成の所へ行って告げた。成は慨然《がいぜん》としてついて来た。そして寝室の前にいくと周は石を取って入口の扉を打った。内ではひどく狼狽《ろうばい》しだした。周はつづけざまに扉を打った。内では必死になって扉を押えて開かないようにした。そこで成が剣を抜いて斬りつけると、扉がからりと開いた。周はすかさず飛びこんでいった。下男が扉を衝《つ》いて逃げだした。扉の外にいた成が剣をもって片手を斬りおとした。周は細君を執えて拷問したところで、自分が獄にいれられた時から下男と私《わたくし》していたということがわかった。周はそこで成の剣を借りて細君の首を斬り、その腸《はらわた》を庭の樹の枝にかけて、成に従って帰山の途についた。と、思ったところで周の眼
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