くたって何ともないのです、それに祝さんのお母さんも可愛がってくだされるのですから、心配しないでください」
三娘の母親は聞いた。
「お前と同時にお茶を飲ましてた媼さんは何人だね」
「あれは倪《げい》という家のお媼さんですよ、自分で心にはじるから、私にやらしたのですわ、今は、もう郡城の漿《のみもの》を売る家の児に生れてるのです」
と、言った。三娘は祝の方を振返って、
「あなたは婿じゃありませんか、なぜあいさつをしてくださらないのです」
祝はそこで三娘の両親にあいさつをした。三娘はそれから厨《だいどころ》へ入って往って母にかわって炊事をし、里の両親に御馳走をした。三娘の母親は女が今までしたことのなかった炊事をしているのがいかにも可哀そうであるから、家へ帰るなり二人の婢をよこして三娘の手がわりをさし、そのうえ金百斤、布帛《おりもの》十匹を贈り、また肉や酒の類はなくならないうちにうちにと送ってきた。寇家ではまた時どき三娘に帰※[#「宀/必/冉」、246−7]《さとがえり》をさしたが、二三日いると三娘は家が無人だから還らしてくれと言った。両親は長く置きたいので、それを引き留めて置くとひらひら
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