んが教えてくれたので、往ってみると、三娘はもう任侍郎《にんじろう》の家の児に生れ代っていたのですが、無理に捉えて伴れてきたのです、それが今の私の家内ですが、二人の間は仲が良いのですから、のんきです」
 暫くして門の外から一人の女が入ってきた。見ると綺麗に化粧した美しい女であった。女は母に向ってお辞儀をした。祝は母に言った。
「これが三娘です」
 二人がそうして揃っているのを見ると生きた人ではないが、母の心は慰められるのであった。祝はそこで三娘に母の手助けをさした。三娘は富豪の女で家事のことをしたことがないので、手際《てぎわ》よく仕事をすることはできなかったが、気だてがよくて同情心に富んでいたから母は喜んだ。
 二人はそれから母の許にいた。三娘は母に言ってそのことを自分の家に知らさした。祝はそれを好まなかったが、母は三娘の言うとおり寇家へ知らした。寇家の両親はそれを聞くとひどく駭いて車に乗って駈けつけた。そして、逢ってみると確かに三娘であるから声が出なくなるまで泣いた。三娘はそれをなぐさめた。三娘の母親は祝の家の貧しいのを見て三娘をなおさら可哀そうに思った。
「私は生きていないから、貧し
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