「僕が死んだなら、あの女をどうしても生れ代ることのできないようにしてみせる」
同年の男は祝を乗物に乗せて舁いで送って往ったが、家に往きつくと共に死んでしまった。祝の母は泣きながら葬式をすました。祝には一人の男の子があったが、児《こども》の母親は柏舟節《みさお》を守ることができないで、半年の後に児を置き去りにして他へ嫁入した。嫁に往かれた祝の母は孫の世話をしていたが苦しいので朝夕《あさばん》に泣いていた。一日《あるひ》例によって孫を抱いて泣いていると祝がしょんぼり入ってきた。母はひどく駭《おどろ》いて涙を押えて問うた。
「お前はなにしに来たの」
すると祝が言った。
「私は、お母さんの泣声が聞えると苦しいから、お母さんの世話をしにきたのです、私は死んでますけれども、家内も出来てますから、それも同時《いっしょ》に伴れてきて、お母さんの苦労を分けさします、どうか安心してください」
母はそこで聞いてみた。
「お前の家内というのは、どうした方かね」
「それは寇三娘です、寇の両親は、みすみす私を殺したから、私は三娘を生れ代らせないようにしようと、三娘のいる所を探していると、友達の庚伯《おじ》さ
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