内の樹木を無暗に斬りだした。源五右衛門は発狂したのであった。それがために扶持を召し放されて田宮家は断絶した。

 田宮家がこうして断絶する一方、伊藤喜兵衛の家では喜兵衛が隠居して養子に名跡を継がしてあったが、その養子も隠居して新右衛門《しんえもん》と云うのに名跡を継がしたところで、二代目の喜兵衛は吉原《よしわら》へ通うようになり、そのうちに遊び仲間が殺された罪にまきぞえになって、牢屋に入れられた末に打ち首になったので、家はとり潰されて新右衛門父子は追放になった。そして、一代目の喜兵衛は乳母の小供の覚助《かくすけ》と云う者の世話になって露命を繋《つな》いでいたが、暮の二十八日になって死んでしまった。
 また、秋山長右衛門の家では、女《むすめ》のおつね[#「おつね」に傍点]が食あたりのようになって歿くなり、続いて女房が歿くなった。その時田宮源五右衛門の家が断絶になったが、その田宮の上り邸はすぐ隣であったから、長右衛門に御預となった。
 そのうちに長右衛門は組頭になった。御先手支配の浅野左兵衛《あさのさへえ》は長右衛門を呼んで、田宮の後をとり立てるように命じたので、長右衛門は総領の庄兵衛《し
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