四谷怪談
田中貢太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)元禄《げんろく》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三十俵二人|扶持《ぶち》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「おつね」に傍点]
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 元禄《げんろく》年間のことであった。四谷左門殿町に御先手組《おさきてぐみ》の同心を勤めている田宮又左衛門《たみやまたざえもん》と云う者が住んでいた。その又左衛門は平生《ふだん》眼が悪くて勤めに不自由をするところから女《むすめ》のお岩《いわ》に婿養子をして隠居したいと思っていると、そのお岩は疱瘡《ほうそう》に罹《かか》って顔は皮が剥《む》けて渋紙を張ったようになり、右の眼に星が出来、髪も縮れて醜い女となった。
 それはお岩が二十一の春のことであった。又左衛門夫婦は酷《ひど》くそれを気にしていたが、そのうちに又左衛門は病気になって歿《な》くなった。そこで秋山長右衛門《あきやまちょうえもん》、近藤六郎兵衛《こんどうろくろべえ》など云う又左衛門の朋輩が相談して、お岩に婿養子をして又左衛門の跡目を相続させようとしたが、なに
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