かっていて、中はすっかり銅であった。臧はそこで二成と相談して、断ったものだけ残しておいて、あとは皆兄の許へ返して容子を見さした。そして、二成に教えてこういわした。
「たびたびお金をいただいてすみません。で、二枚だけ残しておいて、お心ざしをいただきます。しかし私は残っている財産が、まだ兄さんと同じくらいあります。たくさんの田地はいりませんから、もうすててしまいました。買いもどすとも、そのままにするとも、それは兄さんしだいです。」
 大成は二成の心が解らなかったから、
「それは一たんお前にやったものだから、それはお前のものだよ、かえしてはいけない。」
 といって取らなかったが、二成がひどく決心したようにいうので、そこで受け取って秤《はかり》にかけてみると、五両あまりすくなくなっているので、珊瑚にいいつけて鏡台を質に入れて足りないだけの金をこしらえ、それを足して任の家へいって田地を取り戻そうとした。任はその金が二成が持って来た金に似ているので、剪刀《はさみ》で断ってしらべてみた。模様も色も完全に備ってすこしの謬《あやま》りもないものであった。そこで任は金を受け取って地券を大成に、かえした。二
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