成は金を還した後で、きっと間違いがあるだろうと思ってみたが、もう旧《もと》の財産が買いもどされたと聞いたので、ひどく不思議に思ったのであった。臧は金を掘りだした時、兄が先ず貢物の金を隠しておいたものだろうと思って、忿《いか》って兄の所へいって兄を責め罵った。大成はそこで二成が金を返して来た故《わけ》を知ったのであった。珊瑚は臧を迎えて笑顔をしていった。
「財産がもどったじゃありませんか。なぜそんなに怒ります。」
 そこで大成に地券を出さして臧に渡した。と、二成はある夜父の夢を見た。父は二成を責めていった。
「汝《きさま》は不孝不弟であるから、死期がもうせまっているのだ。僅かな田地も汝の有《もの》にならない。持っていてどうするつもりなのだ。」
 二成は醒めてから臧に話して、田地を兄に返そうとした。臧は、
「ほんとにあなたは愚《ばか》ですよ。」
 といって承知しなかった。その時二成に二人の男の子があって、長男が七歳で次男が三歳になっていたが、間もなく長男が痘《ほうそう》で死んだ。臧は懼れて二成に地券を返えさした。大成は二成がいくらいっても受け取らなかった。間もなく次男がまた死んだ。臧はます
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