、次の刀で左側の僧の胴をすくい切りに切った。
「これでどうじゃ」
妖僧は四人になって手を拡げた。
「まだそんなことをするか」
半兵衛はもう見さかいなしに山刀で切って廻った。妖僧は十四五人になった。
「くそっ」
半兵衛は滅多切りに切って廻った。そして、切りながら見ると妖僧の体は切るに従って多くなって来た。半兵衛は此処にこうしていてはかなわないと思ったので、刀を揮《ふ》り揮り一方を切り開いて走った。小石が雨のように半兵衛に向って飛んで来だした。半兵衛は揮り返った。百人ばかりの妖僧が手に手に小石を持って投げていた。石は隙間もなく半兵衛の体に当った。半兵衛は夢中になって妖僧の群へ切りかかった。
「くそっ、くそっ、くそっ」
半兵衛は血声を揮り絞って切って廻った。そして、へとへとになってしまったところで、木の根か岩角かに躓いて刀をなくしてしまった。それでも、まごまごしていては妖僧のために命を失う恐れがあるので、彼は踞んで手に触るものをなんでもかんでも掴んで投げた。
妖僧の群は辟易しだした。妖僧は一人二人と逃げはじめた。半兵衛はそれに力を得て一層一心になって投げた。妖僧の数は益ます減っても
前へ
次へ
全6ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 貢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング