う此処に一人其処に一人と云うようになっていたが、それもとうとういなくなった。
半兵衛はがっかりした。それと同時に夢が覚めたようになった。それでも彼はまだ其処に妖僧がいるような気がしたので、両手に掴んだ最後の小石をばらばらと投げた。その小石は皆|己《じぶん》の胸や頭に当った。彼は驚いて己の体を見廻した。己の体の周囲《まわり》には己の手で己に投げつけた小石が一杯になって、己の顔や頭からは一面に血が流れていた。彼は大きな吐息をしてあたりを見廻した。其処は白々とした河原で直ぐ左側を水が流れていた。それは吉野川の河原であった。
底本:「日本の怪談(二)」河出文庫、河出書房新社
1986(昭和61)年12月4日初版発行
底本の親本:「日本怪談全集」桃源社
1970(昭和45)年初版発行
入力:Hiroshi_O
校正:門田裕志、小林繁雄
2003年7月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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