か捉《と》ってください」
李幕事はそう云って腰から一両の銀《かね》を出して、戴先生の掌《て》に載せた。
「今これだけさしあげておきます、もし捉ってくだすったら、後でまたべつにお礼をいたします」
戴先生は喜んで銀を収めた。
「では、すぐ後から準備《したく》をしてあがります、お二方は一足おさきへ」
李幕事と許宣はすぐ帰った。戴先生は間もなく後からやって来たが、手には雄黄《いおう》を入れた瓶《びん》と薬水《やくすい》を入れた瓶を持っていた。
「どこに白蛇がおります」
李幕事は白娘子のいる室《へや》を教えた。戴先生は教えられたとおりその室へ往ったが、室の扉は締っていた。戴先生は何かぶつぶつ云いながらその扉を開けようとしていると、扉は内から開いた。戴先生は内へ入って往った。内には桶《おけ》の胴のような白い蠎蛇《うわばみ》がいて、それが燃盞《かわらけ》のような両眼を光らし、炎のような舌を出して、戴先生を一呑《ひとの》みにしようとするように口を持って来た。戴先生は手にした瓶の落ちるのも知らずに逃げだした。
李幕事と許宣は戴先生の結果を見に来たところであった。戴先生は二人に往きあたりそうにな
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